「将来のために何かを始めなくては」物価が上がり続け、スーパーの値札を気にする庶民が増加する日本。尻尾に火をつけられたネズミのように焦り、起業を志す人が多くいます。
起業をすること自体は、決して悪いことではありません。
しかし、新卒で就職してから現在まで、会社員からの給料で飯を食らってきた人が、焦ってビジネスを始めて、自分の手で稼ぎ続けることは難しいです。
そして起業を考えた人が、誤って通ってしまうのが、起業系セミナー。実はこれ危険です。
独立開業、起業家育成、経営、、、これらの触れ込みのセミナーは十分に注意をして下さい。
起業系セミナー=詐欺と断定するつもりはありません。ですが、警戒は必要です。この記事を最後まで読む頃には、「起業系セミナーが怪しい」という感覚の正体が分かるはずです。ぜひ最後まで読んでください。
目次
ゼロから起業を志す人を狙うセミナーの裏側
「好きなことをビジネスにしよう!」「情熱をビジネスに!起業は簡単!」
これ、よく耳にしますよね。セミナー募集の常套句です。これらの言葉は耳馴染みがよく、信じたくなる気持ちも分かります。
ですが、あなたがビジネス経験がないなら注意してください。
この言葉には裏があります。この裏側を見抜けなければ、時間もお金も、熱い志も失ってしまうことになるかもしれません。
ネットで見つかる起業セミナー
起業セミナーの情報を目にすることがあります。あなたも見たことはありませんか?
例えば、Google検索すると、

イベントや勉強会、こくちーずなど。SNSでも、様々なセミナー開催情報がヒットします。
「起業して成功したい」「社長という肩書が欲しい」
そんなアナタはこう思うでしょう。先輩起業家からビジネスを教わる為にセミナーに参加しようと。
無料の起業家セミナーに参加する
僕は起業を考えてる。日本が貧しくなっている、ニュースで東大の先生が言ってた。僕が65歳になるころには年金も貰えないかも。
去年生まれた娘、そして妻、家族を守るためにも自分が稼がなくちゃ。
さっそく調べた。起業家セミナーというものがあるらしい。どうやら参加費1万円が「今なら期間限定で無料」
…どうせ、損しても交通費だけ。セミナーは無料。これはチャンスかもしれない。
僕は覚悟を決めて申し込んだ。
そしてセミナー開催日。電車で一本、駅近くの雑居ビル。
ここかな。Googleマップだとここなんだけど…。目の前にそびえる薄汚いビルに入る。
セミナー会場で没収される携帯電話
この小さな会議室でセミナーをやるらしい。入口にはスタッフと思わしき若い女が数人。
「セミナー参加する前にスマホや携帯電話をお預かりしています。こちらのトレーに提出してください」
なぜかスマホを提出させられる。どうやらセミナーに集中させるためにスマホを預かるそうだ。
え、スマホ渡すの?大丈夫かな…不安を感じつつ、自分以外の参加者はみんなスマホを渡している様子を見て、自分もスマホを提出する。
ジャケットを羽織る自称・プロ起業家
「前から詰めて座ってください」
スタッフから指示され、安っぽいパイプ椅子に座る。どんな人が来てるんだろう。見渡す。
ヨレヨレの服を着ている無精ひげの男。安いペラペラのジャケットに身を包んだ若手経営者風の男、サンダル姿で茶髪の女。
みんな疲れた目をしているなあ…そんなことを考えると、講師らしき男が現れる。
「はい、じゃあ、時間になりました。はじめます。」
白Tシャツ、黒いジャケット、ピチピチのパンツ。腕には高級そうな腕時計。20代、いや30代前半か。いかにも仕事ができる感の男が出てきたな。
「皆さん、メモ帳持ってきましたか?ボールペンはありますか?今日のセミナーは貴重ですよ。大事な部分はメモしてください」
当然。今日1日で起業の極意を盗んでやる。
「では、みなさん簡単に自己紹介をしてください」
現在の仕事、境遇、夢、起業する動機を1人1人話していく。そして僕の番がやってくる。
「妻や子供のためにも起業して僕がお金を稼げるようになって、将来に備えたい、そう思って参加しました。」
そして全員の自己紹介が終わると、プロジェクターにオシャレな音楽とPV風の動画が映し出される。講師の男は言う。
「私は24歳で会社を立ち上げ、現在では3社を経営しています。あとは数社の役員をやっています。いまでこそ年商1億円の会社を経営していますが、昔は皆さんと同じでした」
…確かにそういえば高そうな腕時計だし、雰囲気も自分が知っている他の人達とは違う。
普段の会社勤めでは、聞くことがない成功ストーリー。心が震えるってこういうことか。
…うん、やっぱり来てよかった。
セミナー終盤、55万円のプログラムを案内される

セミナーが終わりに近づいたころ、
「さて、今日来ていただいた方だけに、今回のプログラムをご案内します」
「なんと今日のセミナーで参加すると、通常価格の50%割引で受講していただけます。」
「特別価格はこのセミナーが終わるまでですよ!」
価格は55万円。自称・凄腕の経営者の極意を学べば、成功にグンと近づけるらしい。そんな金額払うつもりはなかったし、大金持ってきてない。
そんな僕を見透かしたように講師は言う。
「とりあえず申し込みだけで大丈夫ですよ!明日までならキャンセルもできます」
「参加希望者は後ろにいるスタッフにご相談ください!分割で参加もできます!ここで差が生まれますよ!はい、あと15分!」
申し込みするだけでもいいんだったら…。高いけど半額で参加できるなら…ボーナスでなんとかなるかも。 それに分割も出来るらしいし。
周囲にはスタッフに相談に行く人の姿もポツポツと。募集終了まで残り10分。
「家族のため、将来のため、成功しなければ。これは人生を豊かにする投資だ…」
そして、僕は覚悟を決めて、イスから立ち上がった。
そうだ、会社を辞めよう
プログラムに参加して1週間が経過した。
毎回1つ課題が出される。いい回答を出せば、他の参加者の前で評価されるらしい。
だから皆競うように頑張ってる。僕も負けてられない。みんな本気だ。中には会社を辞める人も出てきたらしい。
「起業して成功するには、退路を断たなければいけません!」
「サラリーマン精神では成功できません。私たちは雇われず自分の手でビジネスを創り上げなくてはいけません!」
確かにそうかも。自分は起業したんだ。そうだ、もう経営者なんだ。
妻に会社を辞めると伝えた。すぐに反対される。
「子供も小さいのに何考えてるの?」
そういえば講師の先生も言ってたな。自分のやろうとすることを反対する人を「ドリームキラー」って言うんだっけ。自分の身近な人ほど自分の夢を否定する…だったかな。
55万円のプログラムに参加したことも妻には伝えていない。今さら言う必要もないや。
そして僕は会社を辞めた。
「〇〇さん、それが起業家です。成功者も最初は周りに反対され馬鹿にされたんです。でも成功したら周りも認めます。これからあなたの起業家としての成功がはじまりますよ」
そうだ。僕は起業したんだ。これから始まるんだ。
収入ゼロ、妻の態度が変わる
そして1ヶ月半が経過。
僕は会社を辞めて、古着の販売をはじめた。とうとう起業したんだ。仕入れた服はまだ1つも売れないし、3日かけて作った通販サイトのアクセスもゼロだけど…。
でも、すぐに成功するはず。
そういえば妻が僕に向ける態度も変わったな。ちょっと前まで、笑顔で話しかけてくれた気がするのに、最近は目も合わせない。話しかける度にため息を吐かれる。
あれ、プログラムの今月の支払いはいつだっけ。クレジットカードで分割払いにしたんだよな。
分割払い。そのデメリットは「利息」がかかること。最大年率15%。分割回数が少なくても手数料は3%かかってしまう。
会社を辞めて、無職になっても、分割払いの負担が無情にもやってくる。これから55万円のプログラムを少しずつ払っていかなくちゃいけない。
生活費に食費、光熱費も払って、分割支払い。減り続ける貯金。
そして気が付く。
…これ払えないかも。会社を辞めたのは早すぎたかな。
超高額グループコンサルに参加する

プログラムに参加して6ヶ月。
売上がない状態が続いている。仕入れた古着は1つも売れず、自室に散らかっている。妻は娘を連れて実家に帰った。今ではこの家に1人で生活をしている。
そしてプログラム最終日。
「この6ヶ月、皆さん本当に頑張りました!」
「今回のプログラムのビジネスで売上を上げる為の極意を貴方は獲得しました。プログラムはここで終わりますが、まだフォローが必要な方もいるでしょう。そこで特別にフォローアップ用グループコンサルを用意しています。」
さらに110万円のグループコンサルを案内された。
僕はプログラムで成果を出せなかった。でもそれはコロナで外出自粛のせいで売れなかっただけ。手厚くサポートしてくれるグループコンサルに参加すれば今度こそ稼げるはず。
親に頭を下げて、お金を借りた。そして参加した半年間のグループコンサル。これが最後の挑戦。退路を断ち切り、覚悟を決めた。
もう引き返せない。
残るのは後悔と借金
「なんで、あんなプログラムに参加してしまったんだろう」
最近は、もう気力さえ湧いてこない。1年前を思い出し、後悔ばかりをする日々だ。
僕はグループコンサルで学び、自分なりに在庫を売ろうとしてみた。ヤフオクやメルカリでも売ってみた。売れなかった。知り合った人達とは、グループコンサル終了後に連絡が途切れた。
…1年前はまだあの会社にいたんだよな。
貯金も妻も娘も、親からの信用もすべて失い、残るのは取り返しのつかない後悔と借金。絶望がまん延したこの部屋に僕は1人たたずむ。
独立開業・起業セミナーの裏側
さて、これが起業家セミナーの裏側です。無料セミナーに気軽に参加したことが、人生が狂うキッカケになってしまった。セミナー被害者と直接私は話したことがあります。
後悔は後に残り、過去は返ってこない。このブログを読む読者には、同じ絶望の体験を味わってほしくはありません。
そこで注意喚起の意味も込めて、セミナーの裏側を1つ1つ解説していきます。
まずセミナーには2種類あります。
- 公的機関のセミナー
- 会社が個人事業主によるセミナー
公的機関のセミナーは、情報を提供してもらえます。無料や良心的な価格のケースが多く、信頼性が高い組織がおこなっています。
一方で、会社や個人事業主によるセミナーは「お客さんを獲得するためのセミナー」です。つまり、無料セミナーで参加者を集めて商品を売るためにおこないます。
なぜ起業家セミナーは安いのか
受講料を無料、もしくは3,000円以下にする理由。それは敷居を低くするためです。
参加費が3000円を超えると、参加する心理的なハードルが上がります。
無料や、3000円以下のセミナーにすることで、参加者を集めるのです。
参加者の心理的にも、「3000円か、この位なら参加してもいいかな」と許容できる値段です。
この戦術に関しては私の過去の記事をお読みください。
高額なバックエンド商品を売ることが目的

そもそも、年商10億円の経営者が、わざわざ無料~3000円の格安セミナーを開催する理由はありません。
目的は、あなたに数十万~数百万円の高額商品を売るため。これがセミナーの本当の目的です。
安くても30万、高い場合は数百万円。高額商品を参加者に売ることが彼らの商売です。彼らは起業を志すウブな人に売りつけて飯を食っています。
セミナーでは、何度も自分の凄さをアピールしてきます。そして自己投資をする大事さを説きます。その結果、例え50万円の高額プログラムでも参加する決断をしてしまうのです。
参加者に夢を見させてクロージング
10年後に生き残っている企業は、わずか6.3%
驚きの事実です。さらに言えば、ビジネスほ90%は5年以内に廃業します。
会社の廃業・倒産率については別記事で過去に書いたので、興味あればご覧ください。
もう、分かりますよね。平凡な個人が起業をして飯を食い続けることは、難しいことです(赤字でも細々と生き続けているゾンビ企業も多いですが)。
それこそ、起業して自由な生活を作るとか、老後に裕福なスローライフを、というありがちな妄想は叶いません。
でも、セミナー講師は、その事実を伝えない。
そりゃそうですよね。参加者がその事実を知れば、リスクを怖がって高額商品を買ってくれませんから。
講師からすれば、自分が儲かることがすべて。参加者は養分です。
…さて、こんなセミナーに参加する価値はありますか? **だと思いますよ。
起業・独立開業を志す人が本当にやるべきこと
時間、お金、人脈、卓越した技術、知識、すべてを持たない”普通の人”が自力でビジネスを立ち上げて繁栄させることが、いかに成功確率が低く、高リスクなのか、もうお分かりになったはずです。
無料セミナーに参加することで、年商10億円のビジネスを作れるノウハウが手に入る確率は低く、それほど短時間で経営ノウハウを盗めるはずもありません。
“普通の人”がビジネスを始める。失敗する確率の方が高い。これは事実です。
もし、あなたがこれからの時代でビジネスを始める、起業を考えているなら自分自身で始めましょう。ノウハウ自体はGoogle検索エンジン上にも転がっています。セミナーは不要です。
そして、ビジネスを始める為の資金や人脈がないなら、なるべくリスクを抑えられるビジネスをおすすめしておきます。
私は起業して8年。ネットで情報コンテンツを売るコンテンツビジネスで飯を食い続けています。おかげ様でお客様にも恵まれており、何とか生存できています。
私のビジネスは在庫も抱えませんし、仕入れもゼロです。初期費用はゼロ。ランニングコストもかかって数千円。利益率は9割。他の業種業態と比べても、起業を志す方におすすめです。
それでも、ビジネスをする以上は、リスクを0(ゼロ)にすることはできません。
ですが、店舗型ビジネスや在庫を抱えるビジネスを起業することに比べたら、その費用は百分の一未満に抑えられます。
私のビジネスに興味があれば、他の記事も読んでみてください。
起業をするなら、ぜひ1度ご検討ください。
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