田舎暮らしに憧れを抱く人は、現代日本で数多くいます。YouTubeでも田舎暮らしのリアルを動画でアップしている方も多いです。
でも立ち止まって考えてほしい。田舎暮らしをするとなれば、その土地にもともと住んでいる人たちがいる訳です。
その人たちとの関わり方、お付き合いの仕方が、ライフスタイルにとても影響してきます。
この時点で「あ、めんどくせえ」と思ったかもしれません。ええ、そうです。面倒です。
まず私の田舎暮らしの話をさせてください。
田舎暮らしをして人付き合い

田舎の暮らしは、顔見知りとの付き合い方で、良くも悪くもなってしまいます。私の場合はどうだったか。
最初は町で有名なおじいさんから、アパートを借りました。このおじいさんがいなければ、私は田舎で暮らすことができなかったでしょう。
アパートに住み始めたら、おじいさんが毎日、朝7時にやってくるのです。
「南さーん、おはよー。」
毎朝、おじいさんの声で起こされていました。朝起きて、おじいさんを迎え入れて、朝のお茶をするのが日課でした。
農業をするために田舎にきたのですが、まだ畑も借りていなかったので、おじいさんの畑を一緒に手伝っていました。
おじいさんは、自分の畑仕事の予定を毎日、私に相談しに来ていました。
そして、私は週に1度の頻度でワークショップを開いていたので、おじいさんは私がいったい何をするのか、いつも興味津々でした。
私がやっていたことは、おじいさんにとっては、とても目新しいことだと思えたんです。
確かに当時は、この町で行われる行事やお祭りと別に、週末の朝、駅に何十人も都会から人が来たり、年に何回か、100人もの人が来たり、バスで東京の小学生が来たりしていました。
おじいさんには、どうして人がたくさん来るのか、不思議だったのでしょうね。
田舎では人付き合いがホント重要
私もいろいろな人を紹介してもらったり、道具の使い方を教えていただいたり、おじいさんとは、とても仲良くしていました。
でも、都会で人とのかかわりが嫌いな人、田舎の付き合い方が嫌いな人、こういうのが嫌っていう人もいますよね。
私は、このおじいさんの信用で、畑を借りることもでき、たくさんの人と仲良くなることができました。
ある人は、おじいさんが訪ねて来たとき、玄関のドアを開けると、おじいさんが煙草をくわえて立っていたので、玄関の中に入ってこようとしたおじいさんを、怒鳴りつけて追い返してしまいました。
その方はおじいさんに、家を探してもらった人でした。
田舎では「郷に入っては郷に従え」

コミュ障で人付き合いが苦手な人だと、そういった関わり合いを嫌うかもしれません。
いざこざに関しても、無遠慮にやってくるおじいさんが悪いと感じるのかもしれません。
しかし、おじいさんが悪いとは、私は思いません。
田舎のおじいさんたちは、くわえたばこで歩くのも、吸殻を放り投げるのも、日常なんです。
もちろん、マナーとしては良いことではありません。
でも、70年も、80年も生きてきて、それが日常の習慣になっているおじいさんに、唐突に、よそから来たばかりの人が、マナーを変えろっていうのは、おこがましいと思います。
言い方もありますよね。
お年寄りが、その辺でおしっこしちゃうのも、この辺りでは普通です。これを受け入れられるかどうか。ある種の寛容さが大事になってきます。
私としては目くじら立てることもないと思うのです。
地元のお年寄りのたばこのマナーやおしっこのことを、目くじら立てて文句言うなら、その土地には来ないほうがいいと思います。
都会から来る人には、そのようなことを目にすると、
自分が正義と言わんばかりに、大批判する人が結構いるんですよね。
「あれはけしからん」「注意した方がいい」と農業講座を支えてくれている、地元の人たちの批判を、私に盛んに言ってくる人もいました。
そういう人は、田舎暮らしは向きません。田舎に来ないほうがいいと思います。
親切や好意で場の提供、時間の提供をしてくれ、その人が求めているものや学びを提供してくれているのに、「目や意識を向けている方向が、違うんじゃないかな」って思うのです。
都会ではあり得ないことも起こる田舎の付き合い、ほかにも、近所づきあいでは、都会ではないようなことが起こります。
勝手に家に上がってくる田舎の人

田舎暮らしでは寛容さが求められると話しました。さて、田舎の程度にもよりますが、やはり寛容さがなければ田舎暮らしはできません。
友人の話です。仕事から帰ってきたら、近所のおじいさんが、勝手に家に上がり込み、炬燵に座って、たばこを吸っていたそうです。
彼女が家に入ると、
「おい、あんたんところは、お茶はないのか?」
といわれて、彼女はカチンときたそうです。
ある人は、家に帰ったら、勝手に洗濯物が取り入れてあったそうです。また別の友人は、畑を手作業で少しずつ草取りしていたのに、ある日、除草剤がまかれていた。
手が回らなくて大変だろうと思われてか、草が生えているのがみっともないと思われたのか、無農薬の畑のお隣との境目に、除草剤を撒かれてしまったんです。
「いや、おいおい、それは困るよ」というのが本音ですよね。わかります。ですが田舎ではこれが普通にあります。
令和の思考で行くとやっていけません。
田舎では共有財産的なところがある
私の家では、庭に置いてあった農具が消えていることもありました。
おじいさんが、私がいないときに、借りていってしまったんです。
黙っていると返ってくる保証はないので、私の方からおじいさんの家に探しに行きます。
鍬とかスコップとか鎌など、おじいさんの親戚や知り合いの家の物も、おじいさんにかかると、勝手に借りていかれるそうです。
そういう場合は、目立つように名前や印をつけておくといいですよ。
ある日、おじいさんの息子さんがうちに来て、「こんちはー、刈払い機どこにありますか?」
刈り払い機というのは、エンジン付きの草刈り機械です。
おじいさん、息子さんの草刈の機械も、どこかへ持って行っちゃったんですね。
息子さんに、刈払い機はどこだと聞かれて「南さんの家にある」って答えたようです。
それで、息子さんは自分の刈払い機が、私の家に置いてあるものだと思ったんです。
「最近はおじいさんが私のを使ってますよ。」と言うと、息子さんは、「また、やられたかー」と。
息子さんは私のより高価な、刈払い機を持っていたんですが・・・。
こんなことは、例を挙げたらきりがないです。でも、自分が持っていない道具って、困って誰かに相談してみると、意外とご近所さんから、貸してもらえるんですよ。
充電器とかチェーンソーとか、高枝ばさみとか、脚立とかね。
本当に助かることが多いんです。
地元の人はみんな私のことを知っていた

ほかにも、田舎に住み始めた時に分かったことは、私は相手の名前を知らないのに、同じ地区の人や出会う人みんなが、私のことを知っていました。
名前も、何をしているかも、どこで畑をやっているかも、婚約者がいることも、どの人もみんな知っているんです。
田舎って、伝言ゲームみたいに情報が伝わるんですよね。
知らない人が近所に住み始めると「怖い!」ということもあるんでしょう。
私のようなよそ者が来て住み始めたら、「私は何者なのか」いろいろと近所の人に聞いて、身元を確かめるという意味もあるんですよね。
田舎は結婚相手をあてがう
そして、私は男なのでよかったのですが、女性の場合だと独り者か、既婚者か!です。
独身だとわかると、さっそく「あそこの息子に嫁にこないか?」と知らないうちに、縁談の話が流れてきます。
田舎に住み始めてから、大分たってからのことでした。農作業の場を拡張をしていた頃でした。
都会から来ていた40歳の女性に、草抜きのアルバイトを頼んだのです。
昼間とはいえ、一人で作業してもらっていたので心配になり、昼下がりに様子を見に行ったら、隣の畑のおじいさんが、
首を長ーくしてビニールをかけていない、大きなハウスの鉄骨の間から、彼女のことを、一生懸命見ているんですよね。
「こんにちはー。何してるのですか?」
「南さん、あの女はいくつだ? ひとりものか?」
息子さんのお嫁さんにどうかと思って、一生懸命、彼女のことを観察していたのでした。
田舎では、跡継ぎにお嫁さんがいない家も多く、おじいちゃん、おばちゃんが、息子の心配をしていることも多いんですよね。
田舎の共同作業や役回りはどこまで受けるのか?

さらに、田舎の習慣や役にどこまで付き合うのか。
これもよく判断してから付き合わないと、後で大変なことになります。
なにしろ、田舎って人手不足で40代~60代は、まだ青年のうちなんです。
ですから、住民票を移すといろいろな役回りが回ってきます。
消防団、お祭りの警備とか準備、回覧板や広報を届ける役とか、地区会費の集金とか、道普請(みちぶしん:草刈りや水路の掃除)とか・・・。
全部、引き受けていたら、土日が朝から夜まで、自由が利かなくなったという人もいます。
かといって住民票を移さないと、ずっと「よそ者扱い」ということもあるんです。
道の駅への出品などは、住民票を持ってきてあるかどうかで、手数料が違ってきます。
その辺の兼ね合いを見定めるのって、都会から田舎に移り住むときは、とても大事です。
全部は引き受けなくても、少しずつ様子見で「今日は見学です」と言いながら参加してみてから、継続するかどうか決めるといいですよ。
どうしても引き受けないとならない役回りもあるので、
できれば、親しくなった方に「住民票を移すとどんな役が回ってくるか」よく聞いてみるといいと思います。
まとめ:田舎では人付き合いが濃い

コミュ障や人付き合いが苦手な人には残念ですが、近所の人や地域の人、同じ町や村の人との関わりが嫌いなら、田舎暮らしはおすすめしません。
都会の習慣や、都会の考え方が通じないこともあります。
「こうでなければならない」「こうあるべきだ」というこだわりを持って、田舎に行くと、かなり精神的に耐えられないでしょう。
穏やかに人付き合いをするために、受け入れられることは受け入れ、合わせても困らない範囲で合わせる。
どうしても合わせられないことは「これはできないんですよ」って、穏やかに断りましょう。
あなたの心の在り方が穏やかで、優しい気持ちがあふれていれば、仲良くしてくれる人も、必ず、いい人ばかりになってきます。
近所の人の悪口を言う仲間に入ったりせずに、そういう話になった時は、少しだけ聞いて、用事があるからって、抜けましょう。
長年の人間関係から来ている悪口に、新入りが意見するのは、後でトラブルになりかねません。
田舎には高齢者が多いです。70代~90代の現役のおじいちゃんたちも、おばあちゃんたちも、結構多いんですよ。
この方たちから、学ぶことがとても多いんです。
お年寄りには、急がせずに、ゆっくり話しして、温かい気持ちでお付き合いしてくださいね。世話好きなお年寄りなら、人を紹介しれくれたり、借りられる家や畑などの情報を見つけてきてくれたり、
農作業や道具の使い方のコツなんかを、とてもよく教えてくれますよ。
こういう関係を受け入れられると、田舎暮らしは、とても楽しいですよ。
都会のやり方をごり押ししないで、ご年配の方には優しくしてくださいね。
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